私のクリスマスの旅


1. 友だちから「ピックヨウル(小さいクリスマス)」のプレセント*をいただきました。ハートのシールが付いた可愛い袋の中には、柔らかな紙に包装された小さな包みがありました。胸を高鳴らせながら包みを開いているときには、その贈り物が私をどんな旅へと連れ出してくれるのかまだ想像できませんでした。 *フィンランドでは、12月の始まりを「小さいクリスマス」と称して祝う習慣があります。

2. 包みの中には、ヨセフ、マリアと赤ん坊イエスの「キリスト降誕のシーン」の素敵な「スノーボール」がありました。ボールの下におかれた子羊は、「どうして聖家族は馬小屋にいるのかな」と不思議そうな表情をしています。ボールの中で雪が降りつもる様子から、 私はきらきらとしたホワイト・クリスマスを連想したのですが、一番初めのクリスマスは、現在のクリスマスとは全く違う、雪が家まで吹き込むような過酷なものだったでしょう。

3. スノーボールの雪が下に落ちたころ、私は若い両親に目を向けました。生まれたばかりの赤ん坊を一心に見つめる母親と父親は何を考えていたでしょうか。そんなことを考えながら、私の思いは、遠く最初のクリスマスに向かいました。

4. その頃のイスラエルでは、国を解放する強い支配者が王座に就くことが待ち望まれていました。イスラエル人はこれまで何度も様々な他の国々による支配を経験していたからです。その時は、ローマ帝国による圧制が敷かれていました。イスラエル人は昔から聖なる預言者たちの口を通して、ダビデの血筋から偉大な王様が出るという預言を聞いていました。しかし、その預言から既に数百年が経とうとしていました。人々はそれを信じることができていたでしょうか。預言によれば、旧約聖書に記されている偉大な王様に先立って、エリヤみたいな預言者が現れるはずでした。。。

5. ある日のことです。ザカリアという祭司が、エルサレムの神殿で祭司の当番を務めていました。彼の前に天使が現れ、ある知らせを告げました。ザカリアの妻エリサベトは男の子を産み、その子をヨハネと名付けなさいとのことでした。その名前は「神は憐れんでくださる」という意味でした。彼は主の御前に偉大な人になり、預言された王の為に、道を整えるのです。ザカリアは恐怖の念に襲われました。今が、神様の約束が実現する時なのですか?そしてザカリアと妻が、そのことに巻き込まれるのでしょうか?

6.ザカリアの心は不信仰に陥りました。彼らのような、年をとった人が子どもを授かることができるでしょうか。この疑いのせいでザカリアは口が利けなくなってしまいました。天使が「知らせた事が起こる日までザカリアは話すことができなくなる」と告げた通りです。ザカリアが聖所の中で香りをたいていた間に、民衆が外で祈って待っていました。人々は、神殿から出て来たザカリアが話すことができなくなったことを見ると、彼が聖所で幻を見たのだと分かりました。

7. その頃、イスラエル北部ナザレという小さい町では、ある一家が喜びの興奮に満たされていました。彼らは、結婚式の準備をしていたからです。家の娘マリアは、偉大な王であったダビデの子孫であるヨセフという男の人と婚約していました。マリア自身はどんな気持ちで結婚式を待っていたでしょうか。この若い乙女はどんな夢を持っていたでしょうか。他の大勢の若い女性のように、自分の家や家族について夢を見ていたでしょうか。

8. ある日、予想外の出来事が起こりました。一人で家にいたマリアを、天使ガブリエルが訪れたのです。天使は、挨拶をし、怖がるマリアに不思議な知らせを伝えました。マリアは男の子を産む、その子は普通の子どもではなく神のみ子だ、その男の子をイエスと名付けなさい、というのです。最初の戸惑いから落ち着きを取り戻したマリアは、「どうして、そんなことがありえましょうか。わたしはまだ結婚さえしていないのです。」と尋ねました。

9. マリアは、聖霊といと高き方の力によって妊娠するとガブリエルは答えます。天使は、マリアの親戚で高齢のエリサベトも男の子を身ごもっていることを伝えた上に、神にできないことは何一つないと言いました。マリアは安心して言いました。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」

10. 若いマリアは、天使のメッセージがいったいどんな意味であったのか、わけが分かりませんでした。彼女は、ぼんやりと家の中を歩いていました。それを見た両親とヨセフはきっと驚いたことでしょう。マリアは、どうしても誰かと話したかったのですが、彼女の気持ちを理解してくれる人はどこにいるのでしょう。マリアはエリサベトに会いに行くことにしました。マリアは、ユダヤの山里にある親戚の家までの長い旅の間に、ゆっくり考えることができたでしょう。神様は、本当にこのマリアを預言された王様の母親にと、選ばれたのでしょうか。

11. 二人の女性たちが会うと、エリサベトの胎内の子が喜びおどりました。エリサベトは挨拶をし、マリアを幸いだ、女性の中で最も祝福された方だ、そして主の母親だと言いました。親戚の家で時を過ごすことによって、マリアは多くの面で癒されました。不思議な妊娠を経験した他の女性からの支えを通して、聖霊が働き、この世で類を見ない妊娠を経験するマリアを力付けました。

12. マリアは、自分の体に起こっていることを理性では理解できませんでした。しかし、感情が開放されるにつれ、この唯一の経験に対する言葉を次第に見つけ始めました。マリアは、心から湧き出る賛美を通して、神聖なそして偉大で真実な神様を褒めたたえました。神様が先祖に与えた約束は実現します。この平凡な若いマリアに、その大切な役割が与えられたのです。

13. エリサベトの出産が近づきました。今度は、生まれたばかりの男の子を抱いたザカリアが賛美する順番です。九ヶ月以上声を発することのなかった口から、神様を讃える讃美が発されました。彼は父親になったことだけでなく、息子ヨハネのためにも喜びました。彼には、昔から預言された救い主のために、人々の心を準備する役目が与えられているのです。

14. 三ヶ月ほどの滞在を終え、マリアは家路へとつきました。すごい秘密を抱えながら。帰宅したマリアを迎えて、きっと家族は安心したことでしょう。これからまた結婚式の準備をはじめます。けれども、計画は思った通りに進みませんでした。マリアが身ごもっていることが明らかになったからです。両親がどのように反応したか、想像に難くないでしょう。「何が起こったのですか。マリアは何をしてしまったのですか。」

15.ヨセフも同じ疑問でいっぱいでした。彼にとって、とても厄介で嫌なことでした。ヨセフは法を重んじるユダヤ人でしたから、がっかりしながらも婚約をどのように穏便に取り消すことができるかと思い悩みました。マリアに恥をかかせたくなかったので、ひそかに縁を切ろうと決心しました。

16. 暗く思い悩むヨセフに、驚くべきことが起こりました。夢の中で天使が現れて、マリアと結婚するようにと励ましたのです。マリアは聖霊の力によって身ごもったと天使は語りました。ヨセフは赤ん坊をイエスと名づけるべきです。その名前は「主は救う」という意味です。その子は自分の民の救い主となるのです。

17. 眠りから覚めたヨセフには、メシアについての預言がマリアを通して実現することがはっきりと分かりました。「おとめは男の子を産み、その子をインマヌエルと呼ばれます。その名は「『神は我々と共におられる』という意味です。」これが分かったヨセフは安心しました。胎内の子の父である神様ご自身が、ヨセフを男の子の育て親としたのです。それでヨセフは思い煩うことなくマリアを妻として迎え入れました。

18. 出産の間際になって、マリア達は長い旅に出ることになりました。皇帝の命令によって、全国民を対象とする税制が準備されました。そのために、全ての人が自分の町で納税者の登録をしなければならなくなったのです。ダビデの家に属していたヨセフは、いいなずけマリアと共にダビデの町ベツレヘムへ旅立ちました。

19. 過酷な旅では、身体を清潔にしたり、食事をしたり、ゆっくり休んだりする以上の望みはなかったでしょう。しかし、生憎、町の宿は客でいっぱいでした。その時、月が満ち、マリアの陣痛が始まりました。マリアとヨセフは仕方なく馬小屋に泊まることになりました。マリアは家から離れた、質素なところで初めての子を産んだのです。

20. 皆が寝静まった頃、町の近くの野原では、羊飼いたちが自分の群れの番をしていました。どこも、安らかで静かでした。突然眩しい光が現れ、羊飼いたちを怖がらせます。天使が現れ、羊飼いたちを静めました。民全体に関わる不思議な知らせを伝えるためです。「ベツヘレムで救い主が生まれました。その方はキリストである主です。布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている幼子を探せば、羊飼いたちはその子を見つけるでしょう。」

21. すると、突然、この天使に天の大軍が加わり、神を賛美して言いました。「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ。」

22. 羊飼いたちは驚きましたが、躊躇することなく町へ向かいました。マリア、ヨセフと飼い葉桶に寝かせた幼子を見つけ、野原で聞いたり経験したりしたことを、全部話し聞かせました。天使が宣べ伝えたことを聞いて皆、驚きました。マリアも静かに、その話を聞き、心に収めました。起こった出来事を、後で思い巡らせるためにです。

23. 私のクリスマスの旅は、これで終わりですが、神様の素晴らしい愛については、今も思い巡らせつづけています。神様は若いマリアの腕の中に、すべてをお造りになった主、神様がお選びになったキリスト、また名前の通りに救い主となる子を与えてくださいました。神様はこの幼子を、「驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君」とし、この幼子のうちに、私たちのところに来られました。

24. こうして、私はクリスマスの旅から戻りました。羊飼いたちのように、見たり聞いたりしたすべてのことを、神様に感謝し讃えながら。 ♫私たちの心を、クリスマスに備えましょう。安らかな心に、幼子イエスが再び生まれます♬ ♫クリスマスの子があなたの心に宿れば、クリスマスはずっとあなたと共にあります。♬

25. 最も素晴らしいクリスマスプレセントは、皆さんの心に贈られます!良いクリスマスを!

 

文・写真:パイヴィ・ポウッカ
翻訳:パイヴィ・ポウッカ & 杉本輝世

 

 

 

 

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