牧師の週報コラム

最近フィンランド事情(その2)

前回のコラムは、フィンランドの若者の間でキリスト教回帰が見られることについて触れて終わりました。今回はその続きです。

フィンランドは1980年代まで国民の90%以上がルター派国教会に属するキリスト教国だったが、その後キリスト教離れが進み、人口550万人の国で毎年56万人が教会を脱退する事態に。現在は60%すれすれまで落ちた。ところが、最近の傾向として1020代の若者の間で洗礼を受けたり(つまり親が無宗教になっていたため洗礼を受けていなかった)、信仰を告白する者が増加していることが統計的にも明らかになってきている。

例えば、世論調査で「神を信じるか、イエス・キリストの復活を信じるか」という質問に対する十代の子供たちの回答は、2015年で男子27%、女子16%だったが、2019年にはそれぞれ43%、19%に上昇。調査対象は教会に所属する人しない人双方を含む。同じ質問を堅信礼を受けた15歳の子供たち(つまり教会に所属する)にすると、2024年の調査では男子60%、女子43%が信じると出た。

あれっ、堅信礼を受けたのなら、100%信じるのが筋ではないかと思われるのだが、フィンランドではそれだけ堅信礼は形式的な通過儀礼の意味合いが強かったということ。しかし、2019年は男女ともに30%程度だったので、男子は2倍に増えたことになり、信仰告白が真実のものになってきていることは明白。しかも、興味深いのは、いずれの結果も信仰は男子の方が女子よりも多いということと、男子が増えるにつれて女子も後追いしているということだ。

若者の間で”キリスト教回帰”が見られる背景として、コロナ禍やウクライナ戦争(フィンランドは1,300キロに渡ってロシアと国境を接する)のために命や将来に不安を感じて心の支えを求めるようになったという見方をしばしば聞いた。人によっては、この現象は世界各地で見られる若者の”保守化”の傾向の一環と見る人もいるかもしれない。私もそういう面は確かにあると思う。しかし、現在のフィンランドの国教会の状態を見ると、そうとも言い切れないこともあり、一概にそうだとは言えないフィンランド特有の複雑な事情がある。そうしたことについては、いつか別の機会に紹介できればと思っている。

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