2025年7月27日(日)聖霊降臨後第七主日 礼拝 説教 木村長政 牧師(日本福音ルーテル教会)

私たちの父なる神と、主イエス・キリストから、恵と平安とが、あなた方にあるように。

アーメン                    スオミ教会 2025年7月27日(日)

説教題:ルカ福音書11113

   説教題: 「天の父は求める者に聖霊を与えて下さる」

今日の聖書はルカ福音書11113節までです。この箇所にはイエス様が弟子たちに「何を祈ったら良いか」教えられました。礼拝で何時も祈っている「主の祈り」です。それが1節から4節までです。その後、続いて5節から13節までのところで「如何に祈るべき」「祈りの大切さ」と「熱心に祈れ」と、たとえ話を用いて話されます。

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まず、111節を見ますと、此処に弟子の一人がイエス様に言いました。「主よ,

ヨハネが弟子たちに教えたように私たちにも祈りを教えて下さい」。イエス様はこう祈りなさい、と「主の祈り」を教えて下さいました。イエス様はまことに祈りの人でありました。それがルカの福音書で最もよく示されいます。イエス様は時々弟子たちと離れて真剣に一人で深い祈りをされた。そうしたイエス様の祈りの姿に心打たれる事もあったでしょう。それである時、イエス様の祈りの様子を見ていた弟子の一人が自分達もイエス様のように祈りたい、そういう思いを持ったのでしょう。当時のユダヤ人の祈りは形式的で枠の中に縛られたような祈りであって、それに比べバプテスマのヨハネの祈りは形式的なところはなくユダヤ人の祈りに対して改革的意味を持って単純率直で厳粛で道徳的でもあったようです。ところで316節以下を見ますとそのバプテスマのヨハネ自身が「私より優れた方が来られる。その方は聖霊と火であなた方に洗礼をお授けになる」と言いましたから、バプテスマのヨハネが弟子たちに祈りを教えているのを比べればイエス様の祈りはもっと優れた父なる神に対する新しい関係であられる、そうした思いを込めて私たちにも祈りを教えて下さい、と言ったのです。イエス様が教えられた祈りの言葉をルカ112節から4節のところで書いています。ここを読みますと、いま礼拝で祈っている「主の祈り」と少しニュアンスが違います。私たちが祈っています「主の祈り」はマタイ福音書の69節から13節までにあります。ここでの「主の祈り」は5章のはじめの山上の説教から続いて祈る時にはこう祈りなさい、と祈る時の姿勢について偽善者のように祈るな、とか人に見られようとして大通りで長々と祈るな、とか異邦人のようにくどくど祈るな、等など細かい注意項目が長々と書かれて9節で「だから、こう祈りなさい」。となって主の祈りです。マタイの方といちいち細かく比較してみようとは思いませんが、ただ注意項目の中の「異邦人のようにくどくどと長く祈ればよいと言うものではない」と言う事は大切な事です。

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さて、今日の聖書の日課のルカの方を見てゆきますと、マタイより祈りの項目が簡潔になっています。最初の2項目は父なる神についての祈りです。終わりの3項目は自分についての祈りです。まず、神のことを祈り、次いで自分のことに及ぶのがイエス様の祈りの根本であります。この事は旧約聖書に於けるモーセの十戒が最初の5つは神に関してのこと、終わりの5つが人間に関する律法であるのと同様であります。第一項「神の御名が崇められること。」この事を人間の根本的な祈りとするところに神本位、神中心の信仰を表すものであります。子として私たちも神の子とせられて父の名を何にも優って崇められる事であります。宇宙、万物は神の栄光を顕し人類の歴史も神の摂理の妙なることを証しています。神の知恵と権威と能力と恩恵は全被造物によって顕されています。この神を仰ぎ賛美し喜ぶ事こそ私たちの衷心とするところであります。私たちの目を神の栄光に注ぐことはまことに喜ばしいことであり、祈りの第一であります。次の第二項にありますのは「御国が来ますように。」私たちの目を神の御名の栄光から、今度は現実のこの世に目を移す時私たちはそこに神を信じない者の不信仰と不義の姿をみます。地球の自然が汚されている。排気ガスや人間の科学技術が進んでも緑の森林が壊れている、地球の海水が熱く上がると地球上の気候が狂って来ています。人間同士の憎しみ合い戦争によって罪なき人々の命や建物が一瞬にして失われている、核兵器の恐ろしさ等測り知れない人間の悪辣な世は神の裁きがくだる。地上の国に神の義、神の平安、神の支配が完全に行われるようになるのはどうすれば可能でしょうか。地上の世界を永遠の正義と平和の行われる理想の社会と、なす事は人間のどんな努力や科学が進んでも出来ないであろう。神の国の実現は理想よりほど遠い。此処に於いて私たちは知るのです。神の国は人間の努力の積み重ねで、その上に築かれる事は出来ない。人類社会が進化して理想状態に到達するのではない。何年も何十年も続いている痛ましい戦争を人間は止められないでいる。神の国は神より出て、地上に来るのである。それは神の意志、御心とによって神の思いと導きに基づき神の審判を通して地上に臨むのであります。それであってこそ神の国の完成に希望と確信を持つことができるのであります。この故に、この故にです。イエス様は「御国の来たらんことを」という祈りを教え給おうのです。「来たり給え」「主イエスよ来たり給え」来たりて「神の御国を地にならせ給え。」と祈り神の栄光と地の平和とを祈りの中に結ばれるのであります。人類社会に平和がもたらされますように、神の救いがもたらせますように、と切なる希望と期待がこの祈りに凝結されているのであります。神の栄光と支配の神への祈りから、第三に急転直下、イエス様は自分のための祈りを教え給うています。それは私たちの生活の只中に必要な日毎のパンのための祈りであります。イエス様は日毎のパンが如何に人間に必要であるか、それなしには生きられない事を御自身の体験からも熟知しておられたのです。パンの祈りに次いで第四には罪の赦しを求める祈りであります。パンは一日々ずつ与えられねばならないように私たちの罪の赦しも日毎に与えられる必要がある、と言う事です。私たちは神に対して、また隣人に対して日毎に罪を犯しています。自分で気づかないうちにも罪を犯してしまう、心に傷を負わせてしまっているのです。それ故に日毎に罪を赦して頂かなければ心に安らぎを得ないのです。罪の赦しを得、新しい一日を迎え勇気をもって歩み始めるのであります。私たちの罪の赦しを神に祈り求める事について私たち自身が隣人の罪を許す事が自分の罪が赦される条件になっているのです。もし、此処に兄弟を憎む心を持ちながら己の罪を神に赦して頂かこうなんて、そんな祈りを捧げることは不可能であります。そこで、神の助け、聖霊の力を受けて、隣人の罪を許してゆくのです。神の前に素直な心をもって己が罪の赦しを神に求める時、神は私たちの罪を赦して心に永遠の平安を与え給うのであります。ルカの表現ではマタイより、より強力で直接的にイエス様の言葉を書いています。

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4節「私たちの罪を赦してください。私たちも自分に負い目のある人を皆、赦しますから。」最後には第五の「私たちを誘惑に遭わせないでください。」この祈りは私たちの日常生活がサタンの試みによって信仰の一番大切な根本を揺るがしてしまわぬように、神の御守りを求めるものであります。私たちの信仰は弱いものですからサタンの試みに遭わぬことが最も安全です。以上の三つは人の生活上の必要を全面的に渡って素朴で基本の祈りをイエス様は教えておられるのであります。次に5節から13節に渡って分かり易い譬え話を用いて「如何に祈るべきか」について、実に力強く、熱く語っておられます。此処での譬え話は一言で言えば、祈りは執拗にまで熱心であらねばならない。また真実にして、真に迫ったものでなければならない。と言う事です。それが真夜中であろうと、実に困っている状況であるなら、求めて、求めてゆく、そこには友人の家の戸を真夜中にドン、ドン、ドンと叩く音が聞こえそうです。こうして強く迫って、求めてゆく熱意が高まってゆきます。熱心に求め、天国を求める者は必ず開けてもらえる、と言う約束が添えられています。しかしながら、どんなに熱く、何回も、何回も祈っても、そこに祈り求めた通りにはならないかもしれない。私たちのこれまでの祈りがこの経験をしているのではないでしょうか。ところで後になってみれば、たとえ求めた通りのものではないが、それ以上の善き物を神様は私たちのに与え賜うのです。此処が大切な事です、私たちの必要を更に深く満たし給うのです。そうして、その熱心な祈り求めと、信頼に対して天の父なる神様から聖霊が送られるのであります。天の父なる神からの聖霊によって、彼らの心は一層強められ、そして天に繋がるのです。更に彼らの目は一層、明らかに神を見る事が出来るのであります。13節の終わりで「天の父は求める者に聖霊を与えて下さる」と約束して言って下さっているのであります。神様はそれ以上に「善き物」として何故「聖霊」を与えて下さるのでしょうか。イエス様の御心に適う祈りだけが天の父の御許に達し、天の父はこれに対して「善き物」を私たちに与え賜います。そして私たちの喜びを満たし給うのです。そして、その「善き物」の中の善き物こそ聖霊であるのです。それを賜わる時、真に私たちの喜びは満たされるのであります。

人知では、とうてい測り知ることができない、神の平安があなた方の心と思いをキリスト・イエスにあって守るように。  アーメン

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