牧師の週報コラム

聖書は原語で読めなくても大丈夫

先週の礼拝の「罪の告白」の導入の時、その日の詩篇の日課36篇から6~7節を用いました。

「主よ、あなたの慈しみは天に

あなたの真実は大空に満ちている。

恵みの御業は神の山々のよう

あなたの裁きは大いなる深淵。」(新共同訳)

その時、ヘブライ語の辞書(HolladayのConcise Hebrew and Aramaic Lexicon of the OT)に基づいて以下の注釈をしました。

〇「慈しみ」と訳される語はヘセド、辞書によれば「恵み、誠実」です。

〇「真実」はエムナー、辞書によれば「揺るがないこと、頼りになること」です。

〇「恵みの御業」はツェダカー、辞書によれば「神の義」です。「神の義」は難しい言葉ですが、神聖な神の前に立たされて「私は何も言えません」という状態にならしめる神の本性としておきます。

〇「裁き」はミシュパート、辞書によれば「仲裁による解決、(そこから派生して)正義」です。新共同訳はミシュパートをほとんど自動的に「裁き」と訳しているようです。フィンランド語訳の聖書では「裁き」はなく、辞書通りの「正義」が多いです。

これらの他に、「空に満つ」は字句通りに訳すと「雲にまで至る」です。「神の山々」は、mighty mountainsと出ていたので「聳え立つ(または雄大な)山々」とします。以上を踏まえて訳し直すと次のようになります。

「主よ、あなたの恵みは天高く、

その揺るがぬ頼り甲斐は雲にまで届く。

あなたの義は聳え立つ山々のよう

あなたの正義は大いなる深淵。」

どうでしょうか、私たちは上に昇って行くと「神の恵み」や「頼り甲斐」に行き当たり、前に進むと「神の義」に行き当たり、下に降って行くと「正義」に行き当たる、それくらい私たちは「神の恵み」、「頼り甲斐」、「義」、「正義」に囲まれているのです。なのに人間は囲いなど存在しないかのように、その中にいないかのように振る舞っています。それで、礼拝で罪を告白して赦しの宣言を受けることは、自分がその中にいることを認めて神の前にヘリ下り、神を信頼して生きていくことになります。

こういうふうに、原文にあたって辞書や文法書と睨めっこしながら見ていくと、訳の少しぼやけた感じが照準が定まった感じになるのではないでしょうか。ただ、原文では、原文では、などと言うと、日本語で聖書を読む人が、日本語で読んでもはっきりわからないのかと心配になってしまいます。しかし、そうではないのです。聖書は原語で読めなくても大丈夫なのです。どうしてそんなことが言えるのか、次週お話しします。

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