牧師の週報コラム 

 キリスト信仰の「平和」と「平安」

イエス様は、「私はあなた方に平和を残しておく、私の平和をあなた方に与えるのだ。私は平和をこの世が与えるようには与えない」と言われました(ヨハネ1427)。 今、世界を見渡すと悲惨な戦争ばかり。戦争がない国でも人が人を傷つることが氾濫してしまっています。 イエス様の平和の約束は空しく聞こえるかもしれません。

しかし、キリスト信仰で言う「平和」の一番大元にあるものは、神と人間が平和な関係にあることです。人間が持つ罪のために神と敵対関係に置かれてしまっていたが、イエス様の十字架と復活の業のおかげで平和な関係を持てる可能性が開かれた。人間はそれを受け取ると内に揺るがない「平安」を得て、波風猛る世にあっても雄々しく進むことが出来るようになる。どうして出来るのか?宗教改革のルターが次のように教えています(フィンランドの聖書日課「神の子へのマンナ」1878年初版 430日の個所から)。

『イエス様が言われる「平和」は、不幸がない時に心を安らかにするというものではない、不幸のただ中にあって、外面的には全てが動揺している時に心を安らかにするものだ。

この世の「平和」とキリストの「平和」の間には大きな違いがある。この世の「平和」とは、動揺を引き起こした悪がなくなることである。これとは逆にキリストの「平和」は、外面上は不幸が続いている状態、敵や疫病や欠乏や罪や死や悪魔が取り巻いている状況でも、内面的には心に慰めと励まし、「平安」があるというものだ。その時、心は不幸を意に介しないばかりか、不幸がない時以上に勇気と喜びに溢れて駆け上がっていく。それゆえ、この「平和」と「平安」は人知を超えていると言われるのだ。

理性が把握できる「平和」はこの世の「平和」だけである。理性は、悪がまだ残っているところに「平和」があるなどと理解できない。理性は心を安らかにする術を知らない。なぜなら、悪がある限り「平和」はないと考えるのが理性だからだ。キリストが私たちを顧みて下さる時、ひょっとしたら私たちの外面的な惨めさは取り除かれていないかもしれない。しかし、主が確実になさることは、キリスト信仰者を強くし、怯える者を恐れない者に、動揺する良心を落ち着かせることである。それで信仰者は、この世全てが恐れおののき青ざめる時でも、よく守られ喜びを失わないでいられるのだ。』

注 上記文の中で「平和」と「平安」と二つ類語が出てきますが、ギリシャ語の原文では両方ともエイレーネ―という一つの同じ言葉で言い表します。訳し分けたのは、「平和」と言うと、日本語ではどうしても戦争の反対の意味で捉えられてしまうからです。エイレーネ―は内面の「平和」すなわち「平安」も含みます。英語のpeaceやフィンランド語のrauhaも、外面的な「平和」と内面的な「平安」を両方含んでいます。面白いことに、スウェーデン語は日本語と同じように二つに区別しているようです。例えば、ローマ1218節でパウロが全ての人と「平和な」関係を保ちなさいと言う時、fredという言葉を使い、イエス様が「平和」を与えると言う上記ヨハネ1427節では、fridという言葉を使っています。大体、外面的な「平和」はfredが用いられています(例えばルカ1432節)。しかしながら、神との「平和な」関係について述べているローマ5章1節ではfredではなく、fridを用いているので、そこでは外面的なものと内面的なもの両方が含まれていると考えられていると思います。

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