説教「主の栄光の御姿」木村長政 名誉牧師 、マルコによる福音書9章2〜13節

今日の礼拝は教会の暦で「主の変容主日」となっています。

イエス様の姿が、3人の弟子たちの前で、真白い衣をまとった姿に変貌された奇跡の出来事であります。

 この出来事があってイエス様はご生涯のうち最も厳しい十字架の苦難へと進んでいかれます。その重要な決意を弟子たちに現された大切な出来事であります。イエス様の公生涯の大きな転換点であります。

 1年に一度だけ必ず語られる御言葉ですから、今日の礼拝ではどうしても聞いていかなければならない大切な聖書だと思います。ですからマルコの他にマタイもルカもしっかりと聖書に書いているわけです。

福音書記者マルコはわりと短く簡単に書くのですが、この出来事についてはかなり詳しく記しています。

ルカ福音書の方では9章28〜36節で同じくらい詳しく記しています。

マルコ9章をみますと「6日の後イエスはただペトロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて高い山に登られた。」とあります。この高い山はおそらくヘルモン山でしょう。イエス様は弟子たちの中から3人だけを選んで高い山に登られた。そして、この3人だけにはしっかりと見せておかねばならない重要な事柄であったからでしょう。

 ところで8章31節以下にイエス様は弟子たちにご自分の十字架の死と復活することも予告されています。31節「それからイエスは人の子は必ず多くの苦しみを受け長老、祭司長、律法学者たちから排斥されて殺され3日の後に復活することになっている、と弟子たちに教え始められた。」

これは聞いた弟子たちはどうだったでしょうか。あのイエス様の心に触れる話に感動し多くの病人をたちどころに治されました。

 そんなイエス様が多くの苦しみを受け殺されるのだと言う。とんでもない。そんなことがあってなるものかと弟子たちは思ったでしょう。

しかも、殺されて死んだのち、3日後に復活すると言われた。これもまたとんでもないありえない事でしょう。驚きと同時に彼らには理解できないことであったでしょう。34節以下でとても大事なお話を群衆と弟子たちに語られています。「私の後に従いたい者は自分を捨て自分の十字架を背負って私に従いなさい。自分の命を救いたいと思うものはそれを失うが、私のため、また福音のために命を失う者はそれを救うのである。人はたとえ全世界を手に入れても自分の命を失ったら何の得があろうか。」ここで福音のため命を捨てて、永遠の命を得る深い真理を語られている。理解できない重要な話であります。そこでイエス様は彼らが話を聞いただけでなく、6日の後に新たなすごい光景を見せるということをされるのであります。信頼する3人の弟子だけを連れて高い山に登られたのであります。

 ルカ福音書の方では、祈るために、イエス様は人里離れたところに退かれた。そうしてまた山に登って父なる神との時を持たれた。祈りの中で天の父と語られた。ご自分の十字架の死の苦難と復活という神様のご計画に従って行こうと重大な決意を改めてなさっていった。

その決意をご自分の姿が変わるという驚くべき栄光の姿を3人の弟子に見せておられるのです。2節から4節を見ますと「イエス様の姿が彼らの目の前で変わり、服は真白に輝き、この世のどんなさらし職人の腕も及ばないほど白くなった。エリアがモーセと共に現れて、イエスと語り合っていた。」とあります。「イエス様の御姿が変わる」という「変わる」の言葉はマタイ 17章2節の方でも用いられています。「イエスの姿が彼らの目の前で変わり顔は太陽のように輝き服は光のように白くなった」と記しています。

 これ以外にはローマの信徒への手紙12章と第2コリントの手紙等用いられていますが、この2箇所では、パウロは聖霊の働きとの関係で用いていて、ここでの「変わる」は例えば第2コリント11章13節には「装う」と訳されています。外面で見た姿を装うことです。ところで、イエス様の御姿が変わったこの場合は単に「服が真っ白に輝いた」という表面的なことだけでなくイエス様の内面も含んで、全人格的な変貌であります。本質の変化なのです。まさに神の子である主の御姿に変わったのであります。それで7節に雲が現れて彼らを覆い雲の中から声がしたのです。「これはわたしの愛する子、これに聞け」と。天の父なる神の声です。これはわたしの愛する子である。神の子である主の御姿を目に見える形で弟子たちに示されたのであります。

 するとそこにエリアとモーセが現れて、主イエス様と語り合っていたのであります。エリアもモーセも歴史の中で特別な存在でありました。預言者といわれたエリアは死を経験することなく天に上げられた人であります。旧約聖書列王記下2章11節に書いてあります。モーセはイスラエルの民をエジプトから導き出した偉大な人と言えるでしょう。シナイ山で十戒を授かったその時は、人が恐れて近づけない程の神の栄光を受けて顔が輝いたと言われた。

旧約聖書出エジプト記34章30節に書いてあります。エリアとモーセが現れたことは大変な驚きでした。それでペテロはこの光景を見て思わず何がなんだかわからず言ったのです。「先生、私達がここにいるのは素晴らしいことです。仮小屋を三つ建てましょう。1つはあなたのために、1つはモーセのために、もう一つはエリアのためです。弟子たちは非常に恐れていたのである。」とあります。

ペテロは神に対する恐れと聖なる喜びにひたって思わず「小屋を造りましょう」と言っています。主の栄光がそこにとどまってほしいと願ったのではないでしょうか。

天の空中で旧約聖書を代表するエリアとモーセが現れて主イエス様と3人で語り合っている、この栄光の瞬間と光景を3人の弟子たちがどんなに驚きつつ恐れて見ていることでしょうか。これはもうこれまでに見たこともない考えられないシーンの中に彼らが、今、特別な空間にいるということです。3人の弟子達から見ればこの世の常識からは考えられない光景であり、奇跡の出来事が展開されているのです。この世の持っている時間と、人間のこの世での目と耳と肌で感じている常識ではとてつもない次元の違う世界が展開し示されているのです。真白の衣をまとい太陽の光のように輝く顔へと変身されている、空中での主イエス様の姿はこれは終末の時、よみがえられた神の子の栄光の姿であります。終末の次元の中ですべてが新しくされた神の国での栄光の座におられるよみがえりの神の御子主イエス様の栄光の御姿が、今、前もってあらかじめ時間空間を超えて先取りして今、モーセとエリアを伴ってあらわれておられる。終末の神の時間の支配の次元の中で復活された主がそのまま空中で現れておられるのです。ですから弟子たちの目にはとても考えられない夢のような光景、驚きの奇跡が空中で展開されているのです。その時雲が現れ彼らを覆い雲の中から声があった。「これはわたしの愛する子、これに聞け」。天からの声は「主が誰であるか」ということを示していました。これから神の子であるイエス様が最後の生涯をどんな方として進んでいかれるかということです。これに聞けそして従え、です。テモテの第一の手紙1章15節には「キリストイエスは罪人を救うためにこの世に来られた」という言葉は真実でありそのまま受け入れるに値します。」とあります。イエス様は神の子であり、このように、罪人を救うために来られた。神の子は人間の罪を身代りに受けて十字架の死をとげる。そしてそういう覚悟をエリアとモーセと確認された。こうして山上での主の変貌の出来事はこれからの十字架の苦難の道へのスタートとなったのであります。来週の礼拝から受難節になっていきます。私たちは今日の御言葉のイエス様が変貌された奇跡を覚えて、たとえ苦難の中にあってもその先に栄光の主イエスキリストとともにあるという信仰を持って希望に生きたいと思います。
アーメン、ハレルヤ!

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