歳時記

杜若・カキツバタ

近くの谷戸池に今年も杜若が咲き出しました。まだ二輪だけですが間もなく満開になるでしょう。 山旅でこの花に出合うと不思議と足を止めて見とれてしまいます。思わぬ所で出合った湿原の池塘に咲いていた杜若は旅人の足を引き留めてしまう妖精のようでもありました。この花の色を説明せよ、と言われたら矢張り杜若色としか説明できない深い色だと思います。

在原業平が三河の国の八橋(愛知県知立市)の「カキツバタ(杜若)の咲く沢で、かきつばたといふ五文字を句の上に据ゑて旅の心を詠め」と言われて、

ら衣つつなれにししあれば
るばる来ぬるをしぞ思ふ(伊勢物語・九段)

<唐衣を着ていると身になれるように、慣れ親しんだ妻があるので、はるばると来たこの旅を思うことだ。> 

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