牧師のコラム

牧師の週報コラム - SLEYは150歳になりました!

Sley

「フィンランド・ルーテル福音協会」(Suomen Luterilainen Evankeliumi-yhdistys -SLEY)は1873年にフィンランドのルター派国教会の中で活動する団体として結成されました。今年は150周年の記念の年です。

団体結成に至る背景は、1700年代のドイツや北欧のルター派教会をめぐる状況があります。当時のヨーロッパのイデオロギーの潮流は信仰よりも人間の理性に重きを置く合理主義が主流でした。それに対してルター派教会の中は、宗教改革の教義を厳密に体系化した正統主義が主流でした。そのような時に、信仰の危機を見て取った人たちが、信仰者個人の内面の敬虔さや「悔い改め」の体験を追求する「敬虔主義」と呼ばれる信仰復興運動を起こしました。これがドイツや北欧でまたたく間に広まりました。

フィンランドは1809年にスウェーデンからロシア帝国に併合されましたが、国教会制度はそのまま存続したので信仰面ではドイツ・北欧の影響下にありました。そのような時にF.G.ヘドベルイという牧師が、敬虔主義の主観的な救い観に対して、たとえ信仰者が罪に堕ちて敬虔さが傷ついても、主の十字架の贖いの業には何の影響もなく罪の赦しの恵みは微動だにしないということをルターの神学から見出して主張。それが多くの牧師と信徒の賛同を得て「福音派」と呼ばれる信仰復興運動が誕生しました。その運動が1873年にSLEYとして結成されたのでした。SLEYはまた国内伝道だけでなく海外伝道も始め、最初の伝道地として日本を選び1900年から宣教師を派遣して現在に至っています(「福音派」といっても現代の北米などの福音主義とは異なります)。

客観的な恵みと救いを強調すれば、聖書の御言葉も人間が勝手に手を加えられないものになり、SLEYは本質的に保守的です。フィンランドの国教会は近年リベラル化が進み、SLEYとは多くの軋轢があります。しかし、国教会の中には教会の現状を憂えSLEYに賛同する人たちも大勢いるのです。

先週の週末は全国各地のSLEYの教会や国教会の教会で150周年の記念礼拝や行事が一斉に行われました。ヘルシンキではSLEYの2つの教会の他に、観光名所として知られるテンペリアウキオ教会でも音楽聖餐式礼拝が行われ、若者を中心に700人もの出席がありました。Youtubeで見る

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