牧師の週報コラム

キリスト教の「祝福」は祝意とは全く別物

米国大統領選の直後、負けた候補者が勝った候補者に電話して「おめでとう」を述べたというニュース(NHK)を見た時のこと。“I congratulated him.”と言った下りを「私は彼を祝福しました」と字幕で訳されていて仰天。確かに日本では「祝福」という言葉は祝意を意味するものとして使われることは知っている。結婚式に参列した人が、私は新郎新婦を祝福しました、などと言うのを聞いたことがある。漢字の「祝」と「福」が組み合わさっているので、おめでたいことこの上ない。しかし、それだとキリスト教で言う「祝福」の本当の意味が見えなくなってしまう。

「祝福」は聖書の至るところに出てくる、キリスト信仰ではとても身近な言葉だ。しかし、それは祝意とは全く別物である。「祝福」とは要約して言うと、好ましいことをもたらす影響力を神から人間に伝達すること。好ましいこととは、健康、裕福、長寿のような具体的なもの目に見えるものを指すことが多い。しかし、そればかりではない。今は否定的・無意味なことでも、神を信頼して歩んで行けば、予想もしない時、予想もしなかった仕方で肯定的・意味あることに変貌する。たとえそれが健康、裕福、長寿の形を取らない場合でも、肯定的・意味あることに変貌することがある。そういう変化も神の祝福のなせる業である。

なので、「祝福」は神からの人知を超えた影響力の伝達で、聖職者など神が立てた者を通して人間に伝えられるもの。「祝福」の源はあくまで神である。人間同士の祝意の表明とは全く別物なのである。長子が受けられる「祝福」を弟ヤコブに奪われたエサウがなぜあれほどまでに失望と憎悪で爆発してしまったかがわかるというものだ。祝い言葉のように考えたら全く理解できないだろう。

キリスト信仰者は食前の祈りで、「食べ物を祝福して下さい」と神にお願いするが、食べ物をお祝いして下さい(?)という意味ではない。それは、これからお腹に入る食べ物を通しても神さまの良い御心が働くようにして下さい、というお願いなのだ。狭く考えれば、栄養や健康を与える役割を果たしますようにというお願いだが、広く考えれば次のようになる。この食べ物が栄養・健康の他にも、もっといろんな分野で神の良い御心が働く手段になりますように。そうなると、食べ物はますます感謝して頂くのが当然になる。

そういうわけで、負けた候補者が勝った候補者を「祝福する」というのは、キリスト信仰ではありえないことなのだ。

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